「インシテミル」/米澤穂信

というわけで立て続けに読んだ、今週の米澤穂信第二弾。こちらは他の作品と関連性のない独立作品で、「遠まわりする雛」とは対照的に、人の死にまくる殺人ゲーム系の推理小説だ。
とある求人誌に載せられたアルバイト。何の変哲もない広告に見えたそれは、一つ不思議な点があった。「時給1120百円」。誤植か、それとも法外な報酬か。集まった12人は閉鎖された空間で、一週間の生活を始める。
提示されたルールは、「殺人を犯せば報酬は二倍。探偵として犯人を指摘すれば三倍」云々。一人一つの凶器まで与えられ、最後に待ち受けるものは何か。
古典部」や「小市民」シリーズを「白米澤」とするなら、こちらはダークな「黒米澤」。「ボトルネック」や「犬はどこだ」に通じる味わいがあるが、どちらかというと初の、「オーソドックスな殺人ミステリ」と言った方がしっくり来る作品だ。
道具立てとしてはよくあるものだが、解決編に至極もっともな理屈を感じた。導入から締めまで、筋の通った(不明な点もあるが)すっきりとした作品。「ボトルネック」で感じた、なんとも曰わく言い難い後味の悪さ(笑)とはまた違った魅力がある。