「遠まわりする雛」/米澤穂信

普段は文庫本や漫画ばかり読んでいる自分だが(収納や経済的事情もあるし)、ハードカバーその他の形式でも読みたい作家は何人かいる。そのうちの一人が米澤穂信だ。毎日本屋に通ってはいても、チェックしていない場所の本には全く気付かない。最近見ないなと思ってネットで検索したら、いつの間にか二冊も新刊が出ていた。
この作者の気に入っているところは、読みやすさに優しさを感じる文章と、その端々から見えるシニカルさ、というかやりきれなさと言うか、そんな辺りだ。硬軟、善悪、清濁併せ持った面白さがある推理小説を書いている。
遠まわりする雛」は優しさを感じられる一冊。著者デビュー作の「古典部シリーズ」に属する短編集で、日常の中にあるちょっとした謎(校内放送の内容とか、祭りの小さなトラブルとか)を扱っている。マガジンGREATの「Q.E.D.ー証明終了ー」に近いノリだ。今回は短編集ということで、主人公達が高校入学した当初から、一年間の幅広いエピソードが詰まっている。
主人公兼探偵役の折木奉太郎は「やらなくてもいいことなら、やらない。 やらなければならないことなら手短に。」がモットーの省エネ人間。ところがその安穏とした生活をかき回すのが、「わたし、気になります!」の一言で彼に推理を強いる、千反田える。自らデータベースを任じる福部里志と、鋭いツッコミがうなる伊原摩耶花。4人の繰り広げる、「ホントに日常的でどうでもいい謎」(笑)から、予想外のちょっとダークなオチに繋がるのがたまらない。萌え系をお望みの方は、二組のカップル(未満)の関係の微妙な変化をお楽しみ下さい(笑)