暗号解読(上・下) サイモン・シン/新潮社

暗号の原理と発展、解読の歴史を分かりやすく解説した作品。ただの知識本かというとそうではなく、暗号に関わった人のエピソードなどを交えながらの解説で、とても面白かった。

単純な暗号の説明だけではなく、その構造や解読の手順まで事細かに記されているので、初歩的なものなら解読できるくらいの知識は身に付けることができる。

第二次大戦で使用されていた有名な暗号化機械「エニグマ」については、その構造まで詳細に書かれているので、工作の腕さえあれば再現できてしまうだろう。暗号関係の本はいくつか読んだが、ここまで具体的で分かりやすい本は初めてだ。

暗号のシステムやその解読は、パズルやゲーム的な思考に通じるものがあってなかなか面白い。巻末には賞金一万ポンドのかかった暗号もあるが(既に解読されているが)、このあたりまで来ると公開鍵暗号素数計算など、コンピュータを使ってもまともには解き難い暗号が揃っている。失われた言語の解読からインターネットと暗号の関係、未来の暗号の可能性までを含んだ壮大な本だ。興味がある人の入門書として是非一つ(読んでる人がそんなものに興味があるかは疑問だが(笑))